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 フットウエアプレス > 特集 単価・数量ともアップ「子供靴」に商機!ショップレポート




マーケットの動き

・少子化が進む中、子供靴に対する消費は増えている。
・一般的な子供靴ではこれまで、3000円が上限とされていた。しかし、子供の足の健康を考慮した商品開発などで付加価値を高め、5000円を超える商品も売れている。
・ブランドスニーカーでは、親子ペアの提案で購買機会を増やし、売上げに貢献している。
・大手チェーンや靴メーカー、卸による、子供靴の専門業態も増えている。ここではベビーやキッズ商品を接客対応で販売しており、サイズカードの発行で、定期的な来店を促している。
・定期的に開催する機器を使っての「計測会」は親御さんの関心も高く、足や靴についての有効な啓蒙活動となっている。
・欧州のようなオーソペディック的な対応で、子供の足の成長を見守ろうとする売場も登場しており、幅広いマーケットで子供靴が展開されている。





かいてき靴ゲゼレのシュー工房 ストウ(茨城・つくば市)

足と靴の専門知識で子供の成長を見守る

3回の改装を経てコンフォート店に

 「ストウ」は茨城県・筑波山麓の北条地区にある、まもなく創業100年を迎える老舗の靴店。10年で3回もの改装を経て、「町の靴店」から、コンフォートシューズを軸とした販売に切り替えてきたのである。
 これには、須藤佳子店長と子息の須藤千尋さんが、相次いでドイツで「シューゲゼレ」を取得して帰国したことに関係がある。両氏は「バチェラーオブシューフィッティング」や「子供専門シューフィッター」の資格も有している。
現在力を入れているのが、子供靴である。きっかけを、須藤千尋さんはこう語っている。
 「自分の子供が生まれたこともありますが、自分ができて他店と差別化できることを考えたいと思ったのです。子供のことなら自分もよくわかる。子供靴を学んでいけば、自分にもお店にもプラスになるのではないかと考えたのです」。

お勧めはドイツ製の「ダウムリング」

 2017年の2回目の改装で、3坪くらいのキッズスペースを作った。子供たちがリラックスして遊べるスペースとしておもちゃや絵本も置き、壁面には靴を並べた。靴はドイツの「Däumlingダウムリング(英語読み)」と「アシックス」などが中心となる。ポイントは足にフィットする靴を選ぶこと。靴の中で足が動くと、足のトラブルになりやすいし、靴も傷む。その点、しっかりと足を包み込むドイツの子供靴は優れている。
 だが、ドイツの子供靴を販売してみると、お客から「靴底が減る」という声があがった。
 「ダウムリング等の海外の靴は一体成形型が多く、スニーカーブランドの子供靴より耐久性が劣ることが多いです。しかしそれは、履き方によるのだということに気づきました。靴底を引きずって履くと、摩擦が生じてどんどん減っていく。踵を合わせてベルトをしっかり締めれば、靴底を引きずることも少なくなります」。
 このことは、日本が脱ぎ履きの多い文化であることに起因しており、靴をつま先から履いてしまう。この文化は幼稚園にも浸透していて、「自分で靴を脱ぎ履きできること」が求められる。少しでも足入れしやすくするために、ストウでは個人個人に合わせたカスタマイズもすることもあるという。

正しくフィットする靴は歩き方と生活を変える

 年齢とともに軟骨から骨化が進んでいき、足ができあがっていくわけだが、その段階で上手にいい足の形にしていくと、体のバランスが取りやすくなり、安定する。このことは後々の人生にとてもプラスになる。
 「幼少期が大切なのです。大人になって、膝が痛い、股関節が痛いと病院に行くのでは根本から治すのは難しいと思います。『すぐ靴が小さくなってしまうので、大きめの靴を』というお気持ちはわかりますが、大き過ぎる靴を履くと、靴底のすり減りも早く、靴全体的にも傷みやすいのです。これを『小さくなったから』と考えてしまうのです」。
 子供靴の顧客の多くは、つくば研究学園都市から来店する。2021年に学園の森に2号店「靴店あしつくる」をオープンさせた。子供靴を中心に特化されたショップで、のびのび遊べるスペースも取られ、さまざまな工夫が凝らされた、子供にも大人にも楽しいショップとなっている。
 

茨城県つくば市北条7
TEL:029・876・2201



アスビーキッズ 吉祥寺店(東京・武蔵野市)

定期的な足の測定を勧めベビーから成長を見守る



「ニューバランス」と「アシックス」が人気

 「アスビーキッズ 吉祥寺店」は、吉祥寺駅から歩いて数分の商業施設「コピス吉祥寺」5階にある。館自体の顧客層は30~40代の女性が中心だが、5階キッズフロアの顧客層はさらに若く20~30代が軸となり、平日でもベビーバギーを押して買い物をするヤングママの姿がよく見られる。
 同店の品ぞろえは、ベビーシューズ(12・0~16・0センチ)、チャイルドシューズ(17~21センチ)、ジュニアシューズ(~24・5センチ)。ことにベビーとチャイルドシューズがよく売れ、この2つのゾーンで売上げの約9割を占める。
 売れ筋ブランドは圧倒的にニューバランスとアシックス。「ニューバランスIO313」は幅広設計で面ファスナーが大きく開き。脱ぎ履きがしやすくなっている。踵に足のぶれを防ぐ固い「スタビライザー」がついている。靴底の踵部分には「Nデュランス」という磨耗防止用の固めの素材を配している。ニューバランスの人気が高いのは、親御さんの「おそろいで履きたい」ニーズもあるようで、人気の高さを思わせる。
 「アシックス アイダホベビー」は足幅が標準か少し細い子のための靴で、2本のベルトでしっかりとフィットさせ、ヒールカウンターで足を支える。もう一つ人気なのが「イフミー」で、土踏まずのアーチ形成を促進してくれる中敷きを採用している。男児はドクターイエローなど新幹線シリーズ、女児ではディズニーのキャラクターシリーズが大人気だ。

接客は「フットナビ」での計測からスタート

 アスビーキッズは全国に40店舗以上を展開しているが、吉祥寺店は常に売上げ上位10店舗のなかに入る優良店。接客は、まず「フットナビ」で足長・足幅・重心の位置などを計測することから始まる。
 「計測の結果をもとに、靴をご提案していきます。1歳数ヵ月から、ファーストシューズをお求めにご来店される方も多くいらっしゃいます。ファーストシューズは、歩きなれていない赤ちゃんが歩きやすいように作られているので、計測の結果をもとにジャストサイズのものをお勧めしています。大きめの靴ですと、足の屈曲部分が靴のそれと合わず、足にも悪影響がある上に、つまずきやすくなるためです」(村田明店長)。
 ポイントは、ファーストシューズとセカンドシューズの切り替えだ。ファーストシューズは歩き始めの子供が歩きやすいようにミッドソールを取り、靴底を薄くしている。その上で歩行を安定させるためにハイカットタイプが多い。4~5ヵ月でセカンドシューズに移行するが、今度はミッドソールが入りクッション性も高くなる。歩いたり走ったりしやすいようにローカットタイプが多くなるのも特徴だ。
 切り替えがスムーズにいくように、ショップ側もサポートしていく。3歳くらいまでは1年に3~4回の計測をお勧めし、計測カードをお渡ししている。「定期的に足の測定に来てね」という店側からのメッセージでもある。
 「赤ちゃんのときから来てくださっているお子さんもいて、成長を見ているのは大きな喜び。これからも、計測会をどんどんやっていきたいと思っています」。
 隠れた売れ筋がインソール。「ソルボ」はバランスよく歩けると好評だ。また、子供は足に汗をかきやすいため、除菌効果のある「オドクリーン」もお勧めしている。



東京都武蔵野市吉祥寺本町1-11-5
TEL:0422・23・6176