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 フットウエアプレス > 戦略を聞く 稲冨治郎氏 (丸紅フットウェア社長)

特集 単価・数量ともにアップ「子供靴」に商機!

戦略を聞く/稲冨治郎(丸紅フットウェア社長)



 丸紅フットウェアはブランド事業とOEM事業の両輪で、靴の市場開拓を進める。ブランド事業の中にはプライベートブランドで展開する「イフミー」があり、好調な売れ行きを見せている。今年6月末に社長に就任した稲冨治郎社長に聞いた。


「メレル」はファン年齢層の拡大
女性層の開拓を進める


――近年の売上げ動向は
稲冨 ブランド事業に「フィラ」が加わり、コロナ流行前の19年までの売上げは、順調に右肩上がりで推移していました。緊急事態宣言等の影響を受けた20年、21年の3月期は、自社直営店に限らず、取引先の大半の店舗も閉めているような状況で、売上げは失速していました。22年3月期の売上げは97億円までに回復しましたが、今期は海外のロックダウンによる工場の稼働停止や材料の供給不足、輸送の滞りに見舞われ、4月以降は円安問題もあり、厳しい状況です。

――「イフミー」「メレル」「フィラ」のブランド事業に、新たに「ロックポート」が加わりました
 2021年に契約し、今年の春夏から販売を開始しています。歴史のある、根強いファンを持っているグローバルブランドであることから、取り扱うことにしました。ビジネスのカジュアル化が進む中で、ビジネスにもカジュアルにも対応できる、快適な履き心地のシューズとして展開していきます。

――商品開発はこれまでと同じでしょうか
 商品はグローバル生産の商品と、日本市場に向けて当社で企画し、生産するものがあります。これまでアイテム的に広がり過ぎていたので、もう一度ブランドの原点に立ち戻ったモノづくりに取り組みます。同時にファンと共に年齢層が上がっているので、40代にも受け入れられるよう、若い年齢層への拡大を図ります。
 ブランドの若年層への拡大は「メレル」でも取り組んでおり、同時に女性層の開拓にも注力しています。「メレル」直営店の「渋谷スクランブルスクエア店」と「東京ベイららぽーと店」の出店では、若者狙いの店舗開発をしています。



「イフミー」の機能性が子育てママに理解される

――ブランド事業の中での好調ブランドは
 各ブランドは単価、顧客層とも違い、単純には比較できませんが、商品調達で滞ることのなかった「イフミー」は好調に推移しています。コロナ禍の中でも伸びており、金額ベースの伸び率を見ると、19年度3月期は前年比105%、20年度は102%、21年度は112%でした。
伸びの理由は、数量が伸びたこともありますが、人気商品の価格ラインのアップも背景にあります。主力上代は、今年の秋冬は3500円で、23年春夏は3900円にアップしますが、「イフミー」のブランドが理解され、価格もブランド価値に見合ったモノとして、広く認められていると思っています。

――「イフミー」はオリジナルブランドでの展開ですが
 ブランドの立ち上げは2000年です。世間で「子供の足が危ない」というようなことが言われるようになったころです。
コンセプトは「子どもたちの足の健やかな成長を育む」というもので、靴を履きながらも、指を動かすことができるよう‶ウインドラスソーサー〟という、オリジナルのカップインソールを装着しており、裸足のような感覚が得られることが特徴です。また、お母さんにとって履かせやすく、脱がせやすい靴であることも人気です。


ブランディングの一環で「イフミー」ショップ出店

――2020年に「イフミー」ショップをオープンさせました
 直営店のオープンは、ブランディングが狙いで、ショーケースとして「イフミー」の世界観を見せています。14坪の売場には約65モデル、200SKUと、全商品を展示し、土日は8人体制で接客し、機能面の特徴やお母さんに使いやすさをきちんと説明しています。
 展開ブランドは「イフミー」のほか、サブブランドの「カラン」と「ナチュレ」の全商品を並べています。サブブランドはおもにアパレルの流通に向けたもので、カラーや素材使いがお母さん目線でつくられており、デザイン面も人気で、大きく変わって良く売れています。



――ほかに「イフミー」のブランディングで行っていることは
 出産や子育てママを応援する各種事業を行っている、パワーウーマンとの共同プロジェクトとして「くつえらびアンバサダープロジェクト」を支援しています。ここで行う「正しい靴選び」や「足の計測方法」など基本的なプログラムに対し、資料提供やプログラムの監修、材料の提供を行っています。
 我々は前面に出ることはありませんが、講師であるアンバサダーを通して、子育てママへの靴選びの啓蒙活動が、「イフミー」のブランディング活動になっています。スタートしてから7年になりますが、これまでに3万5000人ほどの教室参加者がいました。この内の約9割は、一人目の0~1歳児を抱えるママです。
 ほかには、スマホで無料計測アプリ「ぴったりIFME」を無償展開しており、これもブランディングにつなげています。

――「イフミー」ではプレミアムショップの展開がありますが
 「イフミー」は大手靴チェーンのほか、アパレルルートなどに供給しています。プレミアムショップはフランチャイズチェーンではありませんが、卸先のお店で、2~3スパンほどのコーナーを取っていただける店をプレミアムショップとして、「イフミー」の世界観を見せられるよう、直営店と同じ什器を提供し、同じ見せ方、同じプロモーションを実施しています。また、多くのお客さんを集め、好評イベントとなっている「足の計測会」開催のバックアップもしています。この「イフミー・プレミアムショップ」は現在、20店舗ほどあります。

株式会社 丸紅フットウェア
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