今月の記事・ピックアップ 2022・8
 フットウエアプレス > メーカー直営店「 MARUGO KURASHIKI SOLA店 」
創業100年余の地下足袋メーカー ショップでカジュアル用途を開拓

“コハゼ”をなくした地下足袋を開発 

 創業以来、デニムや帆布の産地である岡山・倉敷市で、地下足袋を作り続けている丸五。創業者が1917年(大正6年)ごろに、人力車のタイヤを加工して縫い付けた「縫付式地下足袋」を考案したことが、製品づくりの原点ともいわれている。
 指先が二股に分かれている形状のため、ソールとアッパーを留める「吊り込み」作業は、熟練の技と丁寧な手仕事が要求される工程でもある。製造においては、昔と変わらない専用の道具を使って、手の感覚を頼りに1足ずつ作り上げている。
 地下足袋が生まれてから約100年。その魅力をもっと日本の人に知ってほしいという想いから、2014年に地下足袋の機能を生かした新たな履物の開発に着手した。履き心地などの機能性はそのままに、ストライプやドット柄などの新たなデザインで、女性にも取り入れやすい「tabiRela(たびりら)」を発表した。
地下足袋特有の“コハゼ”(足袋を留める時に引っかける金属製の留め具)をなくして、靴の脱ぎ履きをスムースにし、よりカジュアルなシーンにフィットする、新ジャンルのアイテムを誕生させた。
現在は卸売のほか、直営店も運営。本社横の「KOYAYA(コヤヤ)」、「MARUGO TOKYO」、そして3店舗目として、4月28日にオープンした「MARUGO KURASHIKI」が加わった。

地元の美観地区に3号店をオープン 

 「MARUGO KURASHIKI」は「倉敷SOLA(ソラ)」という商業施設に出店してる。倉敷美観地区のなかで、100年を越える明治後期の古民家をリノベーションして生まれた建物だ。店内は15坪ほどで、大きく曲線を描く什器を導入し、回遊性を意識している。建物の前には広い庭が広がり、美観地区独特の美しい空間が楽しめるように設計されている。
「店内は、これまでのオリジナル商品をフルラインでそろえました。初めて見る方はそのデザインに驚かれるかもしれませんが、弊社の商品は基本的に、つま先部分が二股に分かれたものになります。これは足の指に力を入れやすく、地面をつかむような感覚なので、バランスよくしっかり歩けます。歩くたびに足の指が伸び、普段あまり使えていない足の指を使って歩くので、はだしのような感覚が他の靴にはない気持ちよさです。一度履いてファンになった方が、リピーターになっていただくケースがとても多いです」(同社・ウェルネス推進部・営業企画グループのチームリーダー、鶴見朋之さん)。
特に「たびりら」のアッパー素材は倉敷産の“タケヤリ帆布”が使われ、綿100パーセントの国産生地で、まさにメイド・イン倉敷を意識している。

国内各地の生地産地とコラボした「サンチ」 

また別ブランドの「hitoe(ヒトエ)」は、トレーニングに適したフィット感を目指したシリーズ。アッパーには無縫製のホールガーメントニットで立体的に編まれているのも特徴。また他にもレザー製のタイプ、室内履き、子供向けなど、さまざまなラインアップも楽しめる。それらのブランドに加えて最近では「たびりら」に、「SANCHI(サンチ)」シリーズも立ち上がった。
「『サンチ』は『たびりら』を通じて、日本各地の魅力的な生地の産地を、生産背景とともに紹介していくプロジェクトです。第一弾は福島の『会津木綿』にフォーカスしました。綿花栽培北限の地といわれた会津では400年の歴史があります。夏涼しく冬暖かいこの素材ですが、今では生産している企業は2社しか残っていません。ほかにも日本各地の生地を『たびりら』とコラボレーションしながら、お互いに国内の技術をリスペクトしながら残していければと思います」。
丸五本社には、今では珍しい〝のこぎり屋根〟の工場が立ち並んでいる。古き良き技術を残しながらも、新発想の製品が今後も登場させるという。


◆MARUGO KURASHIKISOLA店/岡山県倉敷市中央1-4-13
丸五/岡山県倉敷市茶屋町1680-1 TEL:086-428-0230