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特集 シューケアは置く≠ゥら奨める≠ヨ

 リーガルシューズ吉祥寺店

132店舗でシューケア対応、来店促進と新規顧客の開拓に


「ケアステーション」と「シャインスタンド」設置

リーガルコーポレーションは2015年2月からシューメンテナンスのプロジェクトとしてシューケアサービスをスタートしている。リーガルシューズの直営店内に「シューケアステーション」コーナーを設け、都内ビジネス街での店舗を皮切りに、靴磨きならびにキズ補修などのメンテナンスに対応できる店を増やしている。22年10月現在、「シューケアステーション」があるショップは43店舗になった。
 シューケアサービスは利用者の好評もあり、21年8月からは磨きに特化した「シューシャインスタンド」を直営店すべてに開設した。シューケアサービスが提供できる店舗数はトータルで132へと拡充した。これによりシューケアサービスの業績は好調で、昨年の「シューシャインスタンド」開設後は、この1年(21年8月〜22年9月末)でシューケアサービスの売上げが2倍以上になっている。


履きおろし前の「プレキュア」を推奨

「リーガルシューズ吉祥寺店」は18年に「シューケアステーション」を併設し、従来の靴販売に加え、磨きやキズ補修などの有料サービスも行っている。サービスの提供をはじめてから4年目になり、メンテナンスメニューの存在は地域や利用客のあいだでだいぶ浸透してきた。
おもな利用者はリーガルシューズを買い求めに訪れる来店客が中心になるため、靴の販売と同時にサービスを勧めるなどしながら、メニューを磨き上げてきた。サービス開始後にプラスしたのが、レザーのホワイトスニーカーを中心にしたスニーカーのメンテンスメニューだ。ビジネス用途などのドレス系のシューズに留まることなく、時代やライフスタイルの変化にも対応している。
 靴販売店ならではの強みは、靴の購入者にその時点でシューケアサービスの魅力を伝えながらセールスできること。とくに吉祥寺店の谷店長は、履きおろし前に行うプレメンテナンスメニューの「プレキュア」サービスを積極的に勧めている。
 プレキュアは履きおろし前のシューズにベースメイクを施すもの。仕上げ材をいったん落としてから革の毛穴を広げ、そこにクリームを入れることによって繊維にオイルを浸透させ、履き馴染みを良くするという効果を生み出す商品だ。
「触るだけでもわかりますが、新品の状態の革靴はなにもしないと固く感じます。製造してから時間を経ると、油分が徐々に抜けてきますから。履く前に油分を入れることで、革靴が持つ本来の履き心地の良さを、最初から得られるようになります」
 プレメンテナンスのサービスは好評で、リーガルシューズ全体でもシューケアの全メニューのうち6割以上の売上げを占めている。吉祥寺店においても固定客を徐々に増やす効果ももたらしている。
「毎回靴を買っていただいて、その後にお手入れでお持ちいただく方が1〜2割くらいは増えました。またビジネスシューズをお買い求めいただいたお客さまに、シューケアのご説明をすると『プレメンテナンスとかプレキュアというのを最初にやったほうがいいんだね』と、お客さまから商品を求められます」(谷店長)。


FC加盟店でもメンテナンスを

 リーガルシューズは、潜在的な靴購入者との接点の拡大や、靴を履いている人の満足度の向上を重視している。たとえば10分程度でブラッシングによる汚れ落としと、クリームを使って磨きを行う「クイック」というメニューがあるが、これは予約なしでも利用できる。店が営業中であれば気軽に訪れて利用できるだけでなく、他社製の靴を履いている人でも(特殊な仕上げなどがない場合には相談に応じて)サービスが受けられるようにした。
リーガルシューズとのきっかけづくりという点では、従来にない間口の広げ方を実現していることになる。メンテンスを機に店舗やスタッフに対する親近感を抱いてもらえれば、いずれ靴を含めたアイテムの顧客になったもらえる。
 靴の購入もネット利用が増え、実店舗は苦戦を迫られている。それだけにネットではできないような、メンテナンスのサービス提供は強みだ。リーガルコーポレーションとしては、直営店は「シューケアステーション」「シューシャインスタンド」のどちらかを開設ずみのため、今後はシューケアサービスをより広げるべく、リーガルシューズのフランチャイズ加盟店への水平展開にも注力したいとしている。

武蔵野市吉祥寺本町2-19-7
TEL:0422-23-1830




 シューボーイズ(東京・豊島区)

"革靴ビギナー"に靴磨きの大切さを伝える

登録者数10万人を数えるユーチューブ「靴磨き芸人 奥野の『兎にも角にも靴磨き』」を配信するユーチューバー・奥野奏氏の、靴磨きの実店舗が「シューボーイズ」である。2020年7月に東京・豊島区の住宅街の中に、7坪ほどの面積でオープンした。繁華街とは違い、訪れるお客は近隣住民か、ユーチューブを見た人やネットで探して訪れる人だ。
 靴磨き職人を名乗る現在の店長・武田拓也さんは、以前は「リーガルシューズ」の販売員だった。当時から靴磨きは趣味で行っており、鏡面磨きも修得していたという。奥野氏のユーチューブで靴磨きを習得する中で、職人募集をしているのを知り、「シューボーイズ」に転職している。


鏡面磨きを加えても2200円と手ごろ

 「シューボーイズ」は革靴を履き始めた初心者に、靴磨きの大切さを伝えたいという目的でオープンしている。同店の靴磨きメニューには「ベーシックコース」と「プレミアムコース」があるが、前者が1100円、後者が2200円と、いずれもリーズナブルな価格設定にしているのも、初心者に靴磨きに親しんでもらうためだ。
 「ベーシックコース」は、汚れ落としから始めて、栄養補給まで、一連の靴磨きを行うもの。一方の「プレミアムコース」はベーシックコースに鏡面磨きが加わる。
 この鏡面磨きが同店のセールスポイントとなっているが、同店では「プレミアムコース」は30分に区切って対応している。
 「前の店長から引き継ぐ中で、この鏡面磨きを短時間で行うことを指導されました。短時間でできてこそ職人であると。鏡面磨きをすることは、靴をケアすること以上に、新品のとき以上にきれいに見せることだと考えています」(武田店長)。
一般にはブタ毛と馬毛のブラシを使い分けるが、鏡面磨きでは馬毛よりさらに柔らかいヤギの毛を使ったブラシで磨く。さらに、鏡面磨き以外をグラデーション風にワックスとヤギブラシで磨き、新品以上の状態に仕上げている。


使い勝手の良い用具をオリジナルで開発

 靴に仕上げや革の種類によって、使うクリームや用具を変えているのも、来店客の信頼につながっている。
「手染めの靴が持ち込まれたときは、溶剤入りのクリームは使わない。染料などによる手染めが取れてしまうからで、ここでは溶剤の入っていない『M.MOWBRAY』のクリーム・ナチュレを使う。ここでは靴が手染めであるかどうかの見極めも重要です」という。
 コードバンの革で作られた靴の履きシワの修正では「レザースティック」を使って毛羽立ちを抑えている。靴好きのマニアであれば持っている用具のようだが、一般には売られていない用具だ。一方、エキゾチックレザー使いの靴は対応できないという。
 「シューボーイズ」は1店舗ながら、ケアクロスやクリーム、ブラシでオリジナル製品を売場とアマゾンで販売している。表面を磨く「シューシャイン・クロス」は年間1000枚を売るヒット商品で、生地の毛抜きがないという特徴がある。
 オリジナルの豚と馬のブラシは、既製品よりも持ち手部分の幅が広く、毛足も長いことで、コバ部分も容易に磨くことができるなど、作業性に優れている。
 来店客の7〜8割は、その場で靴磨きの作業を見学していくという。特に鏡面磨きへの興味は高く、自分でも試してみたいと、テクニックを教わっていく人がいる。
「リピーターも増えており、まだ数は少ないが、女性でも鏡面磨きをされる方もいます。革靴を手入れしながら長く履けば、サステナブルにもつながることを知ってもらいたい」。

東京都豊島区西池袋3−11―12 池袋ガーデンコート1F
TEL: 03−6907−0126