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コンフォートと生きる 足と靴の相談室 コンフォートシューズ リリー



1万円台を主力に低額スニーカーも

 「足と靴の相談室 コンフォートシューズ リリー」は、横浜の東横線白楽駅から徒歩数分の六角橋商店街にある。付近には神奈川大学もあり、人通りもかなり多い。オープンは2008年。小坂辺(こさかべ)浩一代表は長く紳士靴の問屋に在籍し、百貨店を中心にラグジュアリーブランドなどを手広く扱っていた、靴業界38年というベテランである。
横浜・白楽に店舗を持つことになったのは「業界の後輩に相談されて見に行ったところ、地元の人たちがやってきて『みんな困っている、早くお店を開けてほしい』といわれた」ことが後押しになった。
 扱う商品には、高価なドイツの靴ブランドは一切ない。小坂部代表自身がかつてドイツのマイスターについて、靴を深く学んだ経験があるにもかかわらず、である。「AIRRUN(エアラン)」(ヒルトン製靴)や「FIZZ REEN(フィズリーン)」(キタ)、「MACCTE」(矢口製靴)などを軸に、「パンジー」や2000円台のニットスニーカーも置いている。
お勧めは立体成型の「新プラット製法」を採用している「エアラン」で、つま先が上がってローリングしやすく、足裏にフィットしやすいフットベッドタイプ。価格も1万2980円と手ごろで、リピーターも多い。

2000円台の靴もフィッティング販売

リリーとヒルトン製靴の取り組みは深く、年間600万円もの売上げを上げている。現に、店頭ではサイドゴアのショートブーツタイプの予約が始まっており、すでに30件を超えるオーダーが集まっていた。
 「組み立てはシンプルです。『エアラン』は返りがよくて膝の負担も少なく、歩幅が広くなって歩きやすい。2センチ身長が高くなったみたいという方もいらっしゃるほどです。パンプスでは足にフィットしやすい『フィズリーン』など。また扱ってほしいという声もあって、3000~4000円で買えるパンジーも置いています。アサヒシューズ『ウインブルドン』も撥水加工されていて5000円台のためか好評です」(小坂辺代表)。
 店頭に2000円台のニットスニーカーを置くのはなぜなのだろうか。
 「中高年層の多い地区で、年金生活者もいらっしゃいます。スーパーで靴を買って失敗した経験がある方もいます。ですから、接客は計測から始まり、パッドを駆使してフィッティングを行いますが、たとえ2000円台の靴でもそれは同じことです」。

自店の客層に合った絞り込んだ品ぞろえ

 店内は約6坪と広くない。左右の棚にたくさんの靴が並ぶが、実は中央より少し前側にあるレジがポイントで、それより前は左足のみを、奥には右足のみを置く。手前の部分で接客し、完結するようになっている。サイズは23センチと23・5センチが中心で、イレギュラーサイズはオーダーとなる。12月の棚卸の際には税理士に「在庫はこれだけですか」といわせたほど、徹底的に商品を絞り込む。
 とはいえ、店内にはイエローやワインカラーの靴もある。
 「普通の靴店は、色ものは売れ残ると考えて仕入れないから、茶や黒ばかりになって店内が暗くなる。でも、お客さまの好みも変わってきていて、『どこに行ってもカラーがないから』と当店にいらっしゃるのです」。
 顧客の年代は40代から80代までと幅広い。近隣の武蔵小杉や日吉、東京はもとより、遠く熱海や長野、静岡からも来店があるという。クチコミを中心に新しい顧客も増えている。
接客の鉄則は「お客さまがいくらお望みでも、合わない靴は絶対に売らないこと」。合わない靴は、帰って実際に歩いてみると疲れる、足が痛くなってしまうなどの影響が出てしまうからだ。
 リリーは正月三が日を除いてほぼ無休。それだけ来店客が多いのだ。展示会に行くために1日休業しただけでも、3件の問い合わせがあった。1日に8~10人の来店があり、コンスタントな売上げがある。
 「当然ですが、仕入れをするためには、支払いは店の売上げで賄えるようにしなくてはなりません。靴はサイズやカラーもあるので難しい。だからこそ自店をよく見つめることが大切なのです」。
ブランド、サイズを絞り込み、本当に自店に合ったもののみを入れていることが、リリーの成功の秘密であろう



神奈川県横浜市神奈川区六角橋1-9-24
TEL:045・421・6854