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特集 通販がスゴイ!

企業レポート

ビーンズ(香川・高松市)

年商21億円、EC比率9割の地方靴専門店


コロナ禍の中でも2ケタの伸びを見せる

香川・高松市で「AmiAmi(アミアミ)」の店名で実店舗を1店展開しているビーンズ(山口良二社長)。22年6月期の売上高は21億0700万円、前年比6・9%と、コロナ禍にあっても高い伸びを見せている。売上げの90%以上はECによるもので、EC主力に伸びている地方小売店である。
ビーンズは25年前に、地元の百貨店卸から山口社長が独立してスタートした会社だ。前業種を引き継いだ形で、百貨店の催事を主力とした婦人靴卸として、神戸・長田の革靴を主力に販売しており、3年目には5億6000万円に売上げを上げていた。
しかし、ここから伸びることはなく、百貨店以外にも催事場所を広げるほか、実店舗も増やし、小売店卸やカタログ、ECによる通販にも販路を広げていた。
「店舗を増やすことは容易だったが、売れなければその分、在庫も増えることになった。いろんな販路開拓に挑戦したが、カタログ通販にも陰りが見え始め、唯一、実績を残したのはECだった」(山口良二社長)。

18年のキャリアでPB商品が8割

ビーンズがECを本格的にスタートしたのは2005年で、1年後には月商1000万円になっている。
現在、出店しているECモールは、楽天、アマゾン、ヤフー、ショップリスト、リュウリュウモール、ゾゾタウンなど10モールある。ショップ名は「AmiAmi」のほか、ミセスとヤングに分けて2店舗出店する楽天には「EDIE」の店名もある。売上げトップは楽天で、伸び率が高いのはアマゾンという。
出品アイテムは婦人靴を主力としたフルラインで、他にバッグや足関連のグッズがある。中国製のケミカルのほか、国産革靴も扱っており、商品の8割がオリジナルである。オリジナルブランドには「LELIEN PLUS(ルリアンプラス)」「EDGE(エッジ)」「Ms.dolce(ミズ ドルチェ)」などがある。
「定期的に輸入している中国メーカーは10社ほどあるが、初めての取引では5社の内、3社はヤケド覚悟でメーカー開拓してきた。お互いに理解できるまでには、5年間は掛かるが、いずれも直輸入している」。
小売店としてECビジネスで業績を伸ばしているが、すべて18年間かけて勉強してきた積み重ねで、モールに出店するだけでは習得できないノウハウがある。
同店では、売上げを作るために①セールスプロモーション ②価格戦略 ③いかに売るか、の3点を挙げており、非常に神経質に細かく対応する必要があり、常に難しい面があるという。
「品ぞろえをマネして当社を追いかけているところもあるが、商品は同じようなもので飽和状態にあり、オリジナルでなければ差別化はできない」と話す。


適正価格の低額品が中心。メール会員は30万人

「AmiAmi」のショップでは婦人靴だけでも9アイテム、合計43分類に分けて商品を掲載するほか、履いたスタイルを写真も見せている。このほかメンズ、キッズ、商品アイテムやブランド、ヒール高、イベント、売れ筋トップ50、などときめ細かい編集内容で取り組んでいるのも、同ECの差別化の一つとなっている。
現在、ビーンズのスタッフは正社員30人、パート40人体制でECに取り組んでおり、EC立ち上げ時から関わっている人もおり、ノウハウの積み上げが現在につながっている。
価格では1000円から3000円までが主力になる。低価格品を主力にするが、価格戦略では適正価格で臨み、安易に値引きすることはしていない。昨年7月からは為替変動に対応するために、一部商品を値上げしている。こうした適正価格での取り組みが、ユーザーからは価格に対する信頼性に結びついている。
「現在、メール送付する会員は30万ほどいる。このうち、10万人ほどはリピーターとなっているが、常に新規顧客を見つけていかないと、売上げは下がってしまう」。
このため、新規顧客の開拓・拡大が大きな課題となるが、同社では年に数回は、2、3のファッション誌に広告出稿し、自社サイトをアピールしている。
今後の計画としては、現状のファッション誌のほか、インスタグラムやユーチューブなどSNSを使った発信も行う。また、越境ECとして、今年中に台湾に現地法人を作ってECに取り組む計画だ。
一方、現在1店ある実店舗については、継続して存続させる考えだ。コロナが収束したときに、女性たちが実店舗での買い物に、楽しみを再確認するときが来るのでないか、と予想しているからだ。

◇ビーンズ:香川県高松市福岡町2-24-1
TEL:087-813-0216
https://www.rakuten.co.jp/amiami345/info.html




サックスバーホールディングス

多様なプロジェクトでEC部門は130%増

OMO戦略の深化で会員数70万人目指す

サックスバーホールディングスでは2022年度より売上げが回復基調にあり、現在はコロナ前の90%まで戻っている。行動制限も解除され、主力のトラベルニーズが急回復したことや、ビジネスシーンでの買い替え需要、またゴルフやペット関連などの新カテゴリーも貢献している。
 コロナを経てDX施策はさらに進化した。自社サイト、モール系を併せてEC部門では売上げが130%増と伸長。ネット広告への依存や低価格品から脱却し、オリジナル企画やインフルエンサーとのコラボレーションなど、独自政策を積極的に打ち出している。
「6年ほど前からスタートさせた『サックスバーアプリ』の会員数は、現在53万人まで増加、今期中には70万人突破を目指します。お客さまが、店頭でもECでも同じ購買体験ができるよう、会社全体でOMO(オンラインtoオフライン)政策を強化しています。アプリに登録いただいたお客さまは、ご自身の〝お気に入り店舗〟が登録でき、その登録店が発行しているメルマガを読んで購入したという方が増えており、この時代にもメルマガの効果は高いと感じます」(第3商品部デジタルマーケティングディレクター・松井紀嘉(まつい・きよし)さん)。
今年1月からは、EC購入の人に全品送料が無料となる『店頭受け取り』のサービスをスタートさせている。すぐに一杯になりがちな宅配ボックス利用者にも便利で、宅配業者にとっても再配達の必要が無くなり、結果的にSDGsにもつながると考えている。全国に600以上ある店舗網の強みを生かした東京デリカならではの試みといえる。(※現在は関東圏近郊のみ対応だが、順次対象店舗を拡大予定)

PBの「HIGI戦略」で単一アイテムを提案

OMOの一環として、オンラインでも店頭でも共通の〝単一アイテム〟を提案する、カテゴリーブランド「HIGI(秘技)戦略」が2022年からスタートした。
2ヵ月に1回のペースで、「ケスクルデザイン」や「サロン・ド・ルヴァン」など、オリジナルブランドをピックアップし、「HIGI」として詳しく紹介する。ECサイトではビジュアルとテキストで、店頭では同じもののPOPを掲げて、双方向から同じアイテムを提案する。
「改めて、バッグを知り尽くしたプロが作った〝クオリティが高くコスパもよい〟アイテムを考えてみました。基本的には地域に合わせた各店仕入れですが、あえて店舗網を生かし、単品セントラルバイイングによる強みを打ち出しています。オンラインで購入したい方、店頭で買いたい方が同じ購買体験ができることがポイントです。今後は『キソラ』や『フィセブレイブ』など、数あるオリジナルブランドからご紹介していこうと思います」。

ヴィロガーとコラボでZ世代の顧客にアピール

 コロナを経て、東京デリカではインフルエンサーとのコラボレーション企画も進んでいる。元プロ野球選手の斎藤佑樹氏がアンバサダーに就任。「想いをつなぐ、TSUNAGU PROJECT」が2022年11月からスタートした。第二の人生を歩む斎藤さんが考える「ものづくりを通じて、つくる人とつかう人とが想いをわかちあう」といった繋がりを育むプロジェクトだ。
 フォロワー数14万人の人気〝Vloger(ヴィロガー)〟である、bibi room(ビビルーム)さんとのコラボレーションも始まった。Vlogerとは、動画版のブログ(Vlog=Video+Blog)で、ライフスタイルや日常を動画で発信するユーチューブで人気の1ジャンル。ビビルームさんは「bibi room」というチャンネルを持つインフルエンサーで、若い世代から絶大な支持を集めている。
「たまたまビビルームさんが、弊社の『ケスクルデザイン』のバッグをブログで紹介していただいたことから、私どもとのコラボ企画に繋がりました。第一弾のトートバッグは、アップ後1時間ほどで完売してしまうほどの人気で、現在第二弾を企画中です」。
最近では、BtoC、CtoCを経て、PtoC(パーソンtoカスタマー)という時代に入っているという。
「ビビルームさんを支持するZ世代は、〝誰から買うか?〟が重要なので、新しい世代と向き合っていることを実感します。私たちもさまざまなプロジェクトを通じて、DXを深化させるための売り方・在り方を模索しています」(松井さん)。

◆東京デリカ:東京都葛飾区新小岩1丁目48番地14号
TEL:03-3654-5315