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《新社長に聞く》 アシックス商事 小林淳二氏

「履物卸で業界トップポジションを目指し、変革・再編を進めます」

アシックス商事はアシックスグループにおいて、履物主力の製造卸として存在感を発揮する。昨年の取締役会で白川正人氏から小林淳二氏に経営のバトンが渡された。新社長に抱負などを聞いた。

●メンズのビジネスが回復、伸び率ではレディスが突出

―2021年12月期は389億4300万円と前年より32.9%も伸びた。
小林 2020年~2022年の3年間の業績比較は難しいところがある。当社は大別して①海外事業、②靴卸業、③靴資材関連事業、④子会社ニッポンスリッパの4事業※があり、これらをひっくるめての比較は難しい部分があります。

※①「アシックス」ジュニアシューズの受注生産、②同社が靴製造・卸販売、③は靴資材生産販売となっている。

靴卸では、21年12月期は前期比100%を少し超えました。市場環境を考えると、なんとか健闘した。ただ、2019年対比では80%台にとどまっています。

―部門やブランドでの伸び率はどうなっていますか。
小林 部門別ではメンズ、レディスは上向き、キッズは横ばいです。
 ブランド別では、メンズの主力「テクシーリュクス」がやや回復。レディスでは「レディワーカー」の黒パンプスが良い。ひざの悩み対応の「ラクウォーク・ニーズアップ」が好調です。女性の外出が増えているのでしょう。また「ラクウォーク」商品ではライザップとコラボして、足指の把持力アップを特徴とした商品も、支持されています。



―価格と値上げについて。
小林 当社は数年前までは低価格帯で勝負してきました。しかし、安い価格で数量を販売するという考え方から、各カテゴリーで機能性をアップし、価値感を伴った上で単価アップが出来ればと考えています。例えばビジネスの「テクシ―リュクス」は当初6000円ぐらいだったものが、いまは中心が8000円~1万円で、ゴアテックス搭載の1万5000円前後も好調です。
 レディス「ニーズアップ」の主力商品は1万円を超えています。全体に単価が取れており、利益率も良くなりました
 今期の値上げについては、大半の商品で抑えています。コストが吸収できない部分については価格に転嫁せざるを得ない部分もありますが、一律10%~15%上げるということではありません。
ただ、【付加価値=コストアップ】という図式が通じるものと、通じないものが出てきていることは事実ですが、商品価値と価格のバランスが取れていないとお買い上げ頂けないのは確かです。

―トップに就任して改めて、靴市場に対して感じることは?
小林 アパレル業界は新規参入も多いが、靴業界は意外と10年と比べても上位企業の顔ぶれがそれほど変わっていません。でも、これからは競争が激しくなっていくでしょう。
靴業界は昔から在庫過多でやってきた。コロナ禍で商品の動きが鈍かったが、それで流通在庫が減ったという側面もある。生産量が減り、流通在庫もかなり下がったいま、ブランディングなどをやり直すチャンスではないかと思います。

●「テクシ―リュクス」のプレミアムショップ好調

―例えば、どういうことですか?
小林 当社の場合、ブランドやサブブランドが多すぎるのかな、と感じることがあります。その結果、明確なブランド・コンセプトを共有しづらくなっているのでは…。
それでも以前と比べれば、かなり集約されており、ブランドをカットしても意外と影響が出ないんですね。売場がVMD(ビジュアル訴求)型の展開になってきたと感じます。
ブランドをブランディングするには見せ方が大事です。効率だけ追い求めた商品展開は、魅力に欠けるところがあります。ブランドをカッコよく表現するのを“無駄”と考えるのか、“投資”と考えるのか意見の分かれるところですが。

―「テクシーリュクス」のプレミアムショップは、VMDのレベルが高いと見られているようです。いま何軒になりましたか。
小林 一時期100軒以上ありましたが再編して今は87軒です。立地は各都道府県に1軒程度で人口密集地に近いところに設置しています。
これは、当社が“小売店様の売場を預からせていただく”(在庫は小売店様の在庫)、という考えのもとに、規模とアイテム(SKU 数)を決めます。規模は90から120cmを1スパンとして、平均3~4スパン面くらい。それぐらいあると、壁面のインパクトが一変します。施工は弊社で行い、売場とビジュアルの作り方は統一しています。6年前、社内にリテールサポート部を作り、小売店のオーナー・店長様と話し合った上で展開を決め、定期的に売場を巡回しています。密な連携が成功のポイントになります。接客率、接客度合、接客の質が上がっている、と好評です。
「テクシーリュクス」のプレミアムショップ展開が成功しているので、今はジュニア(アシックス)「レーザービーム」)やレディスでコーナーを少しずつ増やしているところです。

―今後アシックス商事をどういう方向に引っ張っていきますか?
小林 グループで見た時、当社はスポーツシューズを除いた履物でキッズ、大人、シニアまで全エイジのポートフォリオ持っています。靴は機能・価値を付加出来る要素が非常に多い。
本来のアシックス商事の強みに、アシックスグループの強みと知見を掛け合わせることで、市場変化に適応し、強化・差別化を進めていきます。
アシックス商事という独立した法人として一定の収益を上げていくのはもちろんですが、業界トップポジションを目指そうと話しています。