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話題 地域ブランド「コトカ」

奈良メーカーの共同ブランドは前年比40%増!展示体験コーナーとポップアップで浸透

全日本革靴工業組合連合会の販路開拓事業の一環として、傘下の奈良靴産業協同組合(寺岡章吾理事長)は、地域ブランド「KOTOKA(コトカ)」を共同開発、ECサイトを通して販売しているが、3年目を経過して順調に市場浸透が進んでいる。
「地域ブランド」支援事業として「コトカ」がスタートしたのは2019年。奈良靴産業協同組合の会員7社が参加し、共同のオリジナルブランドとして立ち上げた。その目的は、オリジナルブランドの事業を足掛かりに、奈良の革靴メーカーの存在を周知すると同時に、ブランドの認知と新規販路の開拓に取り組むというものだ。

ユニセックス・デザインで日本的な美意識を表現

現在、展開しているデザイン型数は、メンズ10型、レディス8型。デザインは共通のユニセックスで、商品上代はマッケイとステッチダウン製法の製品が3万6300円(税込)、セメント製法は3万3000円(同)の設定だ。
これまで紳士ビジネスをメインに手掛けてきた奈良のメーカーだが、「コトカ」では既存の革靴とは違った肉厚の革を使い、一般的な紳士革靴よりも上の価格ラインに挑戦している。
「高級感のあるものよりは素朴なもので、市場にあるようで無いものを意識した商品開発を目指しています。個人の工房で作る、メインストリームとは反対にあるような靴ですが、‶古都の靴〟からネーミングされた『コトカ』の、日本的な価値観や美意識に通じるシンプルなデザインが、ユーザーには魅力を感じてもらえています」と話すのは、「コトカ」の開発に立ち上げから関わってきた鈴木理也さん。
商品はウエブ会社が、7社の商品をまとめてEコマースで販売するほか、ふるさと納税の返礼品としても取り上げられ、人気となっている。まだ売上げは小さいものの、3年目の今期は40 %増を見込むほどに伸びており、ブランドとして注目されている。

国産の特徴的な革使いで一般的な革靴と差別化

「コトカ」のモノづくりは、広く知られたブランドとは違うアプローチをしている。その一つが素材での差別化だ。しっかりと揉んだヌメ革にオイルを入れた栃木レザーの革を使った靴や、兵庫・たつの市のタンナーが作る植物タンニン革をベースに、ロウ引き革を揉んだもので靴を作っている。
こうして作られた革はシボやムラが出やすく、個体差もあり、部位によって表情の違う革になるが、そういった革を「コトカ」ではあえて使っている。
ユニークな革を使った商品開発は、限定生産の商品でも見られ、奈良の特産品である墨を使って染めた‶奈良墨染和牛革〟使いの靴もある。また、黒漆で仕上げた革を使った‶漆黒〟の靴も限定販売している。
「特徴のある革を使った靴は、多くの消費者に受け入れられる商品ではないかもしれませんが、ほかのメーカーがやらないことで奈良の存在をアピールでき、面白がってくれるユーザーもいます」。



靴のケア&リペア・ショップ「展示体験コーナー」

販売は同組合員の入る工場団地内に存在するウエブ会社が、ECサイトで注文を受けており、発送は各工場から直接発送している。このほか、全国4ヵ所に「展示体験コーナー」を売場の中に設置し、消費者をECサイトへ誘導することも行っている。
「展示体験コーナー」は現在、東京、大阪、奈良、福岡 の4ヵ所にある。ここに「コトカ」のサンプルを置いて、そこで試着履きをしてもらい、モデル、サイズを決めた上でECサイトから買ってもらうか、「展示体験コーナー」のある店に取り寄せて販売している。
消費者が実際に「コトカ」を見ることのできる「展示体験コーナー」の設置場所はユニークだ。奈良の店は書店の「蔦屋書店」の中にあり、東京と大阪は、靴のケア&リペア・ショップの中にサンプルを展示している。靴店での扱いは福岡の「ならざき靴店」のみで、各店とも約 50足のサンプルを並べている。
「ケア&リペア・ショップの販売員は革の知識もあり、ムラのある革があってもその理由が説明できます。靴店の販売員も革を良く知っている方もいますが、多くの商品が並ぶ中にサンプル商品を置いても、受注を取るのは難しいと考えています」。
「展示体験コーナー」の設置については、ほかにも名古屋や札幌なども考えており、現在、メンズとレディスの両方をやってくれるところを探している。
ECサイトへの集客はでは、インスタグラムとユーチューブも有効な窓口になっている。ユーチューブでは海外ブランドで活躍したユーチューバーが参加している。フェイスブック、ツイッターでの配信もあり、SNSを活用している。ほかにはポップアップも有効なものになっており、年間数回 開催し、「コトカ」ブランドを広く消費者にアピールしている。