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今後の靴小売の課題

Z世代(デジタルネイティブ)の上手な活用を目指そう! 

高橋悟史(アジアリング)


デジタルネイティブと呼ばれるZ世代(現在11〜26歳)が働く年齢に突入してきた。これから、すべての企業やお店でZ世代の雇用が増えていくこととなる。また、次世代の感性が重要となるファッション関連業界では、Z世代の上手な活用がとても重要となっていくだろう。Z世代との上手なコミュニケーション方法を考えてみる。

 【Z世代とは?】
国内総人口の14%を占める

改めてZ世代を整理してみよう。Z世代は1997年から2012年生まれの世代となる。23年の現在は11〜26歳の年齢となる。年齢幅は広いが、1997年生まれの世代は、すでに社会人デビューを果たしている。
Z世代の大きな特徴は、ほとんどの人が初めて所有する携帯電話はスマートフォンとなる。つまり、ガラケーを知らない世代となる。思春期にスマートフォンとさまざまなSNSが浸透していることから、「デジタルネイティブ世代」と呼ばれている。日本国内のZ世代の割合は総人口の13・9%だが、世界全体ではZ世代は総人口の約3分の1といわれている。これからは世界中のさまざまな企業の商品、サービスのメインターゲットがZ世代になることは間違いない。



 【注目が集まる背景】
マーケティングの主力ターゲット

 世界全体では、Z世代の占める割合が非常に高い。アパレル、服飾雑貨、スポーツなどすべてのトレンドを打ち出すブランド、企業のマーケティングの中心はZ世代となっている。また、Z世代はLTV(顧客生涯価値)が高い。つまり、顧客と企業が取引関係を持っている期間に、その顧客から得られる利益(金額)が非常に高いといわれている。お店もブランドも、Z世代のファンを育成することが、売上げ増や利益増に繋がる最短距離となる。
また、デジタルネイティブ世代でもあるため、SNSを中心とした情報の拡散力は図り知れない。日本国内でも、総人口に対する割合は少ないものの、ブランドや企業に与える影響力の高さから、Z世代に向けたマーケティングは今後、ますます重要になるといえる。


 【活用が必要な理由】
市場開拓に必要なZ世代の雇用

 靴やバッグ業界で、次世代の代表といえる「Z世代」の活用がなぜ重要なのだろうか? それは、どの時代であっても流行やトレンド、カルチャーは次世代(若者)から生まれているから。そのために商品を企画する企業も、商品を販売する小売店でも、次世代の感性の活用は欠かせない。
今の時流に合ったビジネスを展開していくためには、次世代の感性が重要といえる。近年、靴専門店ではスニーカー需要を除くと、次世代需要が弱くなっている。また、バッグ専門店はスクールバッグ需要を除くと、次世代需要が弱くなっている。再び、若い世代に専門店をもっと身近に感じてもらい、次世代開拓を目指すためには、Z世代の雇用が不可欠となる。


 【身近な存在ではない専門店】
客層やテイストが明確な業態を選ぶ

 Z世代にとって現在、専門店は身近な存在となっていないことが指摘されている。都心では、靴やバッグを購入する店がアパレル店、雑貨店、ネット販売店などになっており、靴専門店、バッグ専門店がZ世代に正しく認識されていない。
一方、地方や郊外立地では、大型ロードサイド店の靴店は存在するものの、旧来のフルライン型の品ぞろえにZ世代はなかなか馴染めない。また、SC内でも靴やバッグ専門店は出店しているものの、アパレル店、雑貨店、スポーツ店、スニーカーセレクト店など、客層やテイストがより明確な業態に好みが移り変わっている。専門店がZ世代に馴染みのないお店となっている。
 また、現在はSNSやスマートフォンニュース、Google画像検索などで、お店を認識するケースが増えており、メディア戦略を上手に活用している企業と、そうでない企業では、大きな格差が生じている。スマートフォンを通じてブランドもお店も選択するZ世代にとって、より身近に感じられるメディア情報が重要となっている。
さらに靴専門店、バッグ専門店の販売職を中心とした雇用も大きな課題となっている。Z世代が慣れ親しんでいる人気ブランド店では、リクルート情報も充実しているが、メディア戦略に乗り遅れた中小の専門店では、「なかなか求人が集まらない」「募集しても次世代の応募が全くない」とういう例も珍しくない。このため、Z世代に向けた、集客(お客さま)と雇用(リクルート)対策を同時に行っていくことが、靴・バッグ業界ともに急務である。


【Z世代の内面を知る】
固定概念を持たず効率性を重視

 ここで、Z世代の内面を整理してみる。
この世代は、多様性を当たり前のこととして受け入れているので、「自分らしさ」をより大切にしたいと考えている。また、年齢や性別、国籍などの属性に固定概念はないため、「多様性(ダイバーシティー)」「ジェンダーレス」「LGBTQ」(※)など自然に受け入れている。上の世代と比較すると、さまざまな価値観を持ったすべての人々にとても、フレンドリーであることが大きな特徴だ。

(※)Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性自認が出生時に割り当てられた性別とは異なる人)、QueerやQuestioning(クイアやクエスチョニング)の頭文字をとった言葉で、性的マイノリティ(性的少数者)を表す総称のひとつ

 「他人からどう見られているのか?」「他者からの評価に対しても敏感」「承認欲求がとても強い」のも大きな特徴だ。スマートフォン上でコミュニケーションするSNSに夢中になるのも、こういった傾向が強いことが大きく影響している。また、SNSを通じて国内外・年齢・性別・職種を問わず、さまざまな人とのつながりを持つことを得意とする。
 効率性を重視する傾向も強く、WEBやスマートフォン、さまざまなサブスクリプション(定期購読、継続購入)の発達に伴い、映画を倍速で見たり、書籍は音声で流し聞きする、購入よりレンタルで済ませるなど、時間を短縮して楽しむ傾向が見られる。時間を掛けて没頭するのではなく、スピーディーで簡単にチェックする感覚が、自然と身についている世代だ。


【ミレニアル世代とZ世代の違い】
「モノ消費」より「コト消費」を重視

 一つ上の世代となるミレニアル世代(1981年〜1996年生まれの現在、26〜41歳)とZ世代の違いを比較してみる。
 ミレニアル世代は成長期に好景気を経験している。「自分が欲しい商品」や「テレビ番組で紹介される流行商品」などにお金を使う「モノ消費」が中心となり、さまざまな流行を体感してきた世代といえる。
一方、Z世代の成長期は、リーマンショック(2008年)や東日本大震災(2011年)が発生している。モノの大流行も非常に少なく、イベントやライブ、体験への参加など「コト消費」を重視している。
 就職の際に企業に求める要素は、2つの世代間では大きく変わっていないといわれている。ただし、Z世代はミレニアル世代よりも、私生活を優先したい価値観が増えているようだ。仕事で成功するよりも、仕事とプライベートの両立を図った「ワークバランス」をより重要視する傾向が強い。
このように「Z世代」の特性をしっかり理解した上で、「次世代開拓」や「次世代雇用」に取り組んでいきたい。