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中村岐雄氏(中村靴流通研究室)

ニューステップ(現ジーフット)元社長で、現在、中村靴流通研究室(N研)を主宰する中村岐雄さんは、今年8月に「店長塾」を開講する。44年間の靴小売業での実務経験、18年間のN研の活動を通して得た経験と知識を、現場の店長に伝えたいという。「店長塾」開講の目的や小売店の今後などについて聞いた。

「形から心を育てる」を店長指導では話してきた

――今回の「店長塾」を開講する目的、内容は

直近の情報ではイトーヨーカドーが今後3年間で33店舗を閉鎖するとし、残りの店舗も食品だけにするという。GMS業態ではなくなるわけですが、ダイエー、マイカルの破綻など全国展開するGMS業態が苦戦する一方、イズミや平和堂のように地域GMSはまだ善戦しています。これはアメリカ市場でもいえることで、地域に密着できない店舗は難しくなっています。
 今、地域の最前線にいる店長の存在、役割というものが、ますます重要になってきています。

 今回の「店長塾」では、店長として必要な知識に絞ってお話をしたいと思いますが、基本的な知識に加えて、「お客さまを大切にする」「従業員を大切にする」といった、「心」についてもお話しするつもりです。
 多くのナショナルチェーンを誕生させ、戦後の流通業を育てた「商業界ゼミナール」の店はお客のためにある≠ニいう商人道の精神をあらためて受講生に伝えていきたい。

――店長にとって大切なことは

私が現役当時、常に形から入り、心を育てる≠ニ言ってきました。例えば、お客を相手にした靴販売の際は、膝を付いてフィッティングのお手伝いをするように、形を大事にすることで、顧客を大切にする心が育てられると伝えてきました。何百店の店をもつチェーンであろうと、独立店であろうと、お客の支持と信頼は個々の店に与えられるものです。
お客に支持され、信頼される店には必ず「基本的な知識」をもち「お客さまを大切にする」という心をもつ店長がいます

 店長の基本的な知識の中では、情報の発信も重要です。POS情報のような<定量情報>では、数量的なことはわかりますが、なぜ、この商品は売れたのか、売れなかったのか、欠落している商品は、といった<定性情報>は、現場にいる店長が発信すべき情報になります。
 店長塾の詳しい内容は「店長塾の方針と内容」をご覧ください。

情報交換≠目的に協業の場を持つべき

――靴専門店がこれからすべきことは

 ECビジネスについては、今後も伸びていくでしょうが、同時に、リアル店舗の「ストアイメージ」など、ますますリアル店舗の重要性が増してきます。サイズが重要な靴のECでは、返品の仕組みをどう合理化するか、在庫の持ち方、など多くの課題があります。
 過去の良い立地に甘え、「お客のためにより良い店を目指す」「従業員にとって働き甲斐のある店にする」といった志、考え方を持たずに、会社、店、人に投資してこなかったことも多くの専門店が低迷している一因かもしれません。

 小売店、とくに単独店や数店舗展開する小規模店の生き残りについては、協業ということを考えるべきではないでしょうか。共同販促や共同仕入れではなく、まず、地域の異なる同じような業態の店が、横につながり、情報が行き交うような場をつくるべきです。年に何回かは集まる場も設ける、今ならネットを使った情報交換やネット上での集まりの場も持てます。
コンフォート商品をていねいな応対で販売しているような店には有効です。情報交換するためには、「共通の言葉」が必要で、商品分類や財務に関わる経費項目、単語の定義などを共通化することなどが必要になります。

 私は44年間ほど靴業界にいましたが、店長の仕事が一番面白かったし、一番好きでした。今までの経験と知識、“店はお客のためにある”という「心」を伝えていきたいと思っています。



「店長塾の方針」
1、 各社の経営理念に抵触するような話はしません。
2、 企業規模、業態の異なる企業の方々にも共通する基本的なことをお伝えし、理解してもらいます。
3、 小売業だけでなく、小売業を知る必要のあるメーカーの方、特に営業、商品企画の方々にも役立つ内容を話します。

「店長塾の講義内容」

1日目 米国と日本の流通業の違い。
    日本の靴市場の現状と今後。
    ――――――――――――
    お客さま第一の風土を創る。            
    お客さま第一の接客応対。
    士気の高揚(モラールアップ)
2日目 人を育て、活かす。
    パート・アルバイトの採用。
    店長の情報管理。
3日目 在庫管理で稼ぐ。
    補充発注技術。                    
4日目 品目構成と商品構成。
    商品構成で売る。 
    グラフィックデザインとPOP広告。
5日目 粗利益率コントロール
人の生産性を上げる。
    お客さまのための経費と資産管理。
                                 
 なかむら・みちお略歴
1934年生まれ、東京都出身、58年銀座三愛に入社、61年(株)タケヤ入社、(株)西友シューズを立ち上げ、店長を2年間担当。以降、商品・教育・店舗開発・トップマネジメント担当。82年ジャスコ(現イオン)傘下の(株)マイランドシューズ設立、社長に就任。1号店の葛西店店長を2年間担当。以降、トップマネジメントを行う。89年(株)ロマンシューズと、94年(株)ダイヤモンド高田と合併、(株)ニューステップに社名変更。97年取締役相談役、05年退社。N研・中村靴流通研究室設立。 


N研「店長塾」開講のご案内


 ネットビジネスが拡大する中で、リアル店舗のあり方がますます重要になってきています。お客が店舗に対し感じるイメージは店舗の売上げだけでなく、ネット関連の売上げにも影響します。
 たとえ、何百店の店をもつチェーンストアであろうと、あるいは独立店であろうとお客の支持と信頼は一店一店の店に与えられるものです。その第一線に立ち、お客とじかに責任をもって接することが出来るのは店長しかいません。
競争は「店長の腕」の戦いでもあります。企業は常に「現在の業績」と「将来への布石」を必要とします。店長は主として、現在の業績向上を任務としますが、スタッフの教育・訓練やストア・マーケティング情報の発信を通して、将来への布石にも貢献しなければならなりません。
 「店長塾」では、44年間の実務経験と18年間のN研の活動を通してえた実体験と知識をもとに、時代と企業、業態を超えて不変な靴専門店の「店長の仕事」と「店長に必要な知識」をお話しさせていただきます。
 現役の店長、店長を目指す人、店長の教育、指導を任務とする人、の他、小売業を知るためにメーカーの方にもご参加いただけたらと思っています。
                          

N研「店長塾」

1 第一期 店長塾開催日時:本年8月より12月までの5回。毎月第2水曜日、13:20〜16:40の3時間、計15時間。
           場所:池袋サンシャインシティ・コンファレンスルーム・ルーム3

         ※ サンシャインシティには、ABCマート、WAオリエンタルトラフィック、クローバーリーフ(チヨダ)、CST&P(エスペランサ)、ワークマンシューズ、メレル、パトリック、コロンビア、ザ・ノースフェイス、などが出店していますので毎月定点観測が出来ます。

2 定員:   30名 *定員になり次第締め切らせていただきます。

3 受講料:  5回計 15,000円(税込み)  ※7月31日までに下記にお振込み願います。
          みずほ銀行 所沢支店(558) 普通預金 1039621 ナカムラミチオ
          * 都合により欠席の日は、2,000円を返却、当日使用の資料をお送りします。

4 申込み方法:下記アドレスに必要事項ご記入頂きお申し込みください。
                  nakamura@bd.wakwak.com
          @ 貴社名  A ご担当者名:電話番号 B 参加者名(フリガナ):担当職務