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2023年秋冬MDガイド 橋 悟史(アジアリング) シューズ&バッグ ファッション・トレンド

2023年秋冬は、コロナ禍が継続するのではないかの警戒感が拡がる「鬱(うつ)」と、コロナ禍から解放されるのではないかの期待感による「躁(そう)」の、相反する心理の混在がファッション・トレンドに大きく影響していく。「鬱」ではエレガンススタイルが広がるが、「鬱」ではアクティブなスポーツカジュアルが流行する。
このため、23年秋冬は「女性的エレガンス」と「男性的カジュアル」の異なる要素が混在するトレンドに変化していく。エルガンス傾向も継続しつつ、一方でメンズライクなカジュアルやスポーティーのテイストが浮上してくる。
また、20年ほど前に流行したテイストやデザイン、アイテムがZ世代(10代中盤から25歳ぐらいまで世代)の若者を中心にリバイバルヒットしていく。具体的には「お姉さん系コンサバスタイル」の再登場や「セクシーなストリートスタイル」の再燃など、2000年頃にも流行した、一癖あるスタイルが広がっていくだろう。


メンズトレンドはクロスオーバー化

カラー傾向はグレーやシルバーをベースとしながら、「ニュアンスカラー(中間色)」を楽しむ傾向が見られる。ナチュラルな色合いの人気は継続するが、中間色を中心とした目新しいトレンド・カラーが次々と登場していくのが大きな特徴だ。
 同時にさまざまな場面で「クロスオーバー化」が広がっていく。メンズトレンドは、レディスで大流行しているアイテムやシルエットを積極的に取り入れ、ジェンダーレス化の流れが加速していく。また、男女共にビジネススタイルと休日スタイルで兼用する、オケージョンと普段着で兼用するなど、クロスオーバー化と合せて「汎用性」の高いアイテムを求める傾向が強くなる。


レディスシューズ

ショートブーツ主力にロングを加える

 2022年秋冬、ヤング世代では「ロングブーツ」が完全復活したが、25歳以上の大人世代は買い控えも見られ、まだまだ「伸びしろ」が大きいとアイテムと言える。ただし、以前のように寒さ対策でブーツを買い求めるのではなく、あくまで旬のコーディネイトを楽しむためにブーツを選択する。ここでは大人世代でもストレッチ(伸縮性のある人工素材)やニット素材の広がりが加速する。
ブーツのアッパーデザインは、シンプルなプレーンデザインが主流となるので、引き続き「ラスト」や「ソールやヒールのデザイン」「カラー」などで新しさを求める傾向が強くなる。また、女性らしい雰囲気を残しつつ「適度なルーズシルエット」と「フラットソール」「タンクソール」使いなど、履き心地もより快適で、適度なリラックス感をプラスしたアイテムが人気となる。
 ブーツの主流となるのは「ショートブーツ」。この秋冬は、ワンポイントの装飾使いが大きく復活する。ブーツでも、ゴールドを中心に、ビットやプレート、バックル、チェーンなどの金具をデザインアクセントとしていく。大人世代では、さりげなくワンポイントの装飾使い、ヤングトレンドでは、インパクトのある派手な装飾使いで、目新しさを出していこう。


汎用性の高いカジュアルパンプス

 通勤スタイルやオケージョンスタイル(結婚式やパーティー)では、汎用性の高い靴を求める傾向が強くなる。普段のお食事会や百貨店でのお買い物、休日デートなどでも兼用できる靴を求める傾向が高まる。このようにシーンを限定させない汎用性の高いパンプスを打ち出す事が必要となるだろう。
旧来の「オケージョンパンプス」だけでなく、デザイン性の高い「カジュアルパンプス」の中から、リボンパンプスやバックベルトパンプス、フラットパンプスなども一緒に組み合わせて提案していこう。このようにパンプス全体はシーンを限定させず、汎用性の高いアイテム選びに対応するのがポイントとなる。

ボーイズライクなモカシューズ

カジュアルシューズでは、「オックスフォード」や「ローファー」などトラッド靴が中心だったが、この秋冬はボーイズライクな「アメカジ靴」の人気が広がっていく。ヤングトレンドではワラビーやチロリアンなどモカステッチをデザインアクセントとした「モカシューズ」が復活してきたが、ここにティンバーランドの定番イエローブーツ(今回はローカットタイプ)なども加わり、ストリート色の強いアメカジ短靴人気が拡大しいく。
これまでは「おじ靴(おじさん風)」がキーワードだったが、今回は「ボーイズ靴」新勢力となっていく。


レディスバッグ

汎用性の高いハンドバッグ

 バッグは引き続き女性的なハンドバッグ人気が継続していく。小型トートや小型ショルダーだけでなく、「クラシックボストン」や「ワンハンドル(一本手)トート」「ワンハンドル(一本手)ショルダー」「バニティバッグ」「バケツ型バッグ」などさまざまな形状の「小型ハンドバッグ」を楽しむのが大きな特徴。
国内企画のレザーバッグは、デイリー感覚で楽しめるナチュラルな雰囲気のバッグが主流となってきており、よりエレガンスな雰囲気の、ハンドバッグタイプへ切り替えていくことが必要となる。加えて、オケージョンアイテムでも「冠婚葬祭」や「パーティー限定バッグ」ではなく、普段着でも楽しめる、汎用性の高い「ハンドバッグ」を新しく打ち出していきたい。
 ファーはアパレルでは大注目されているが、季節限定の素材は、バッグでは敬遠される傾向が見られる。ここでは、革付属、異素材コンビ、インテリアファブリック使用など、付加価値を高めた布帛やナイロンの打ち出しが必須。ミセス世代は、ナイロンなどの軽い素材でハンドバッグ感覚を楽しみたいので、エレガンス形状の「布帛&ナイロンバッグ」の強化が大きなポイントとなる。

キャシュレス化でコンパクト財布に

 革財布は世代によって求める傾向が異なってくる。キャシュレス化とハンドバッグ化が加速するヤング世代では、「カードウォレット」「スマートフォン・フォレット」など「コンパクト財布」が一般化する。
一方、大人世代は引き続き、長財を支持する女性も多い。大人世代に向けた革財布では「スリム財布」や「時短財布(小銭がすぐに取り出せる)」「スマホショルダー財布」など、進化した「長財布」を継続されていく。また、金運アップなど縁起の良さを求める傾向が見られるので、「金運アップの天然石使用」など、ディテール使いで差別化を図っていきたい。