今月の記事・ピックアップ 2024・1
 フットウエアプレス > 特集 さらに進化!「サステナブルの価値」

23年秋、サステナブルファッションEXPOと東京レザーフェアと2つの展示会が開催された。この中から注目のサステナブル関連の素材・製品をピックアップして特集する。

第106回 東京レザーフェアの傾向

12月7~8日、都立産業貿易センター台東館で「2024-25年秋冬コレクション~はじめから、これからも、ずっとエコ。」のテーマで開催された。「はじめから、これからも、ずっとエコ」というサブテーマにふさわしく、各社のブースではSDGsをテーマにしたエコ素材の提案が目立った。また、欧米各社との取引のためにはLWG(レザーワーキンググループ)の認定が必要とあって、認定取得に成功した企業も見られた。





 福島化学工業

タンニンなめしでは不可能といわれた「白地」に挑戦
 東京・墨田区のタンナー。同区はピッグスキンを地場産業として発展してきたが、福島化学工業は牛皮のなめしも行っている。ピッグスキンでは、タンニンなめしでは不可能といわれた「白地」に挑戦。従来、白地の革をつくるにはホルマリンやクロムなどのなめし剤を使っていたが、環境に優しいタンニンなめしで試行錯誤の末に実現したのが、「オルガノホワイト」だ。染料がしみこみやすく、しかも、にじみにくいという、相反する特性を兼ね備えている。



 山口産業

独自のタンニン鞣しによる「ラセッテーレザー」
 東京・墨田区のタンナー。1990年よりピッグスキンの植物タンニンなめし製法「ラセッテー」を開発、15年よりすべての革をこの製法に切り替えた。一般の植物タンニンなめしより変色が少なく耐熱性が高いなどの特色を持つ。
 また、害獣として駆除されたシカやイノシシなどの皮が廃棄されていることに着目し、有効資源として活用する活動も行っている。定期的に「MATAGIセミナー」を開催し、獣革の活用を検討している人々に情報公開している。



 ニシノレザー

伝統の“板張り”技術を生かし、高品質を維持
 東京・墨田区のタンナー。ピッグスキンを植物タンニンでなめした「ヌメ革」を得意とする。なめし剤はミモザ、ケプラチョ、タラパウダー、チェスナットなど。ホルムアルデヒドが出ない「純白の革」も同社ならでは技術を生かした商品だ。
なめした皮の乾燥は“板張り”で行う。これは大きな板にヌメ革を張って釘打ちし、外気でゆっくりと自然乾燥させる。こうすることで、と革がフラットに仕上がり、製品メーカーもあつかいやすくなる。



 吉比産業

“革の真ん中に。”をコンセプトに活動する皮革卸
大阪に本社を置く、130年以上の歴史を持つ皮革卸。“革の真ん中に。”をコンセプトとし、「(当社は)革をつくるわけでも、革を製品にして販売するわけでもなく、それは革にまつわるすべての真ん中をになうこと」と位置付けている。
表情のある不思議な表面感のある革は、まるで未知の金属のようにも見える。また、漉きの技術を使ってレザーウエアも提案。使われずに廃棄されることの多い鹿革を使ったベストは、軽くて着やすい。



 太閤染革

国産ダチョウ皮からオーストリッチを製造
埼玉・草加市にある爬虫類専門のタンナー。50年以上にわたり、エキゾチックレザー(ヘビ、ワニ、トカゲ、オーストリッチなど)を扱ってきた。タンニンなめしを主に生産。鞣し剤はミモザ、チェスナット、ケプラチョ、タラなど。また、高たんぱく&ローカロリーとして人気のダチョウは、皮は捨てられがち。こうした国産のダチョウから、高級なオーストリッチ革を生産している。昨秋、LWG(レザーワーキクング・グループ)認定のシルバーも取得している。




 
《企業スポット》

新喜皮革
飼料に使われていた魚の皮を有効利用

●サーモンやコイの皮をなめす
 新喜皮革は、1951年創業の姫路のタンナー。馬の臀部を使った高級皮革・コードバンは、業界やアーティストの間でも高い評価を得ている。
 2017年から新規事業として取り組んでいるのが“魚”の革だ。昨年12月の東京レザーフェアではノルウエ―産のアトランティックサーモンやコイなどの革を展示していた。いずれもカラフルに染色され、爬虫類革のような光沢・風合いがある。ブラックバスや完全養殖の近代マグロの革も製造しているが、最も人気が高いのはアトランティックサーモンだという。
 「魚の皮は弱いように思われますが、生の状態だと比較的強いのです。そのまま鞣せば強度も出ます。ただ、牛革や馬革と同じように鞣すと溶けてしまうので、温度を低くし、緩やかに優しくなめすなど細心の注意が必要です。また、皮の油分を抜く、ウロコを取るなど手間もかかります」(新田芳希社長)。
 なめし剤は合成タンニンなどを使い、一連の工程は、試験用の小さなドラムで行われている。

●サステナブル素材として用途広がる
 用途には小物が多く、財布、時計バンド、ベルト、また靴のワンポイントなどに使用されており、次第に広がりつつある
 これまで魚の皮の活用法は肥料程度しかなく、廃棄されるものがほとんどだった。日ごろ食卓にのぼる魚の皮がなめされてファッショナブルな革に生まれ変わっていくのは、「まさにサステナブル」と市場からも驚きをもって迎えられている。
手入れ方法は一般の革と同じで、扱いやすい。1枚の価格は3000~5000円程度と高級。国内では製造しているのは3社ほどあるというが、これからの成長が期待される新分野だ。
新喜皮革TEL:079-224-8136 https://shinki-hikaku.jp/



NEWS
繁栄皮革
LWG環境認証のゴールドを取得

姫路のタンナー、繁栄皮革工業所がLWG環境認証(レザーワーキンググループ)の最高位であるゴールドランクを日本で初めて取得した。環境認証の格付けは、標準合格・ブロンズ・シルバー・ゴールドの4つがある。エルメス、ルイヴィトン、コーチ、バーバーバリーなど世界の有名ブランドのほとんどがLWGに加盟しており、皮革を供給するためには認証取得が必須となっている。同社によると、現在、全世界の皮革生産のうち、LWGタンナー生産の割合は40%までに達しているという。


NEWS
YKK
リサイクルファスナー「ナチュロン」などに注力
「ナチュロン®」はケミカルリサイクルによる再生ポリエステル原料を使用した環境配慮型ファスナー。ケミカルリサイクルとは、回収された繊維くずなどのポリエステル素材を化学分解することで不純物を除去し、再生ポリエステル生成するリサイクル方法。
YKKでは回収されたペットボトルを原料とするマテリアルリサイクルも展開中だ。また、ファスナーの主材料であるポリエステルを30%が植物由来のファスナー「Green Rise®」も好評。