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トップに聞く 木山剛史氏(サックスバーホールディングス社長)

「来期はPB&キャラクターと、軽量化でコロナ以前の売上げを目指す」

コロナ禍の中、トラベル関連の需要は大きなダメージを受けた。しかし、22年10月以降、コロナも収束に向かい、人流も活発になる中、バッグ小売のサックスバーホールディングスも収益を回復している。

スーツケースの伸びなどで今期はコロナ前の9割台に

――ここ数年の状況は。
木山 2020年3月から22年9月まではコロナの影響で、大きく下げる結果となりました。22年10月には旅行支援がスタートし、スーツケースがけん引する形で市況は動き始めました。ただし、3年近くのダメージは大きく、コロナ前の実績に戻るまでにはいっておらず、今期(24年3月期)は9割台を見込んでいます。
 主力ブランドの価格は2割ほど値上がりし、ほかの商品も平均すれば1割ほど上がっていることもあり、客単価は上昇していますが、客数はまだコロナ前の状況には戻っていないのが現状です。第3四半期を見ても、売上げは目標に届いていませんが、利益についてはほぼ目標近くになっています。客数さえ増えてくれればと思っています。

――4月からの新事業年度の見通しは?
 前期の2月後半から盛り上がりを見せており、4月以降も悪い要因はないと考えています。大手企業が所得を増やす動きも出てきており、これがいい循環で消費に向けばと期待しています。また、インバウンドの方の活発な需要もあり、これまでは都市部の店の売上げは好調なのに対し、地方の店の動きは遅れていました。しかし、2月以降、これまで苦戦していた地方店も良くなってきています。

バッグの人気は革から軽量、小型化の傾向に

――好評なスーツケースに対して、特に革のレディスバッグは厳しいのでは
 革のバッグを購入する顧客層は、比較的に年齢が高く、コロナ禍では外出を控えた層で、厳しい状況にありました。コロナが収束に向かう中で回復を期待していますが、まだ元通りには戻ってはいません。
 購買傾向も変わってきています。財布小物は革モノでも売れますが、重さに対する抵抗感は強くなっており、軽量なナイロン系バッグが支持される傾向にあり、「カナナプロジェクト」「ショゾン」などのブランドは人気です。全体に革モノから移行しているので、ナイロン系でも差別化できる人気ブランドで対応しています。

――最近はランドセルも軽量なものが求められる傾向にありますが
以前は、当社もランドセルを扱っていましたが、今はほんの数店舗のみ扱っているだけです。しかし、来年度からは、現状90万人近くいるアプリ会員に向けて、積極的にランドセルを紹介し、販売する計画です。一般的なものを扱っていても、大手量販店さんには勝てないので、革の著名ブランドや、最近の市場ニーズに合った、軽量でクオリティーの高いものなど、こだわったランドセルを扱います。

――財布やスマホケースの依然人気が続いていますか
 〝開運日〟の認知度が高まっていることで、バッグ店にとっても大きな販促イベントになっています。特に今年は3大開運日が重なったこともあり、3月の初めから、今年の開運色として茶系の財布が売れ出しました。昨年大変売れたスマホケースは、今は少し落ち着いています。現金が使われなくなっても、カードを入れる財布は必要ですし、小型化する中ではスマホケースのようなものはますます求められます。

大人のバッグでもキャラクターが人気

――ほかに商品で新しい動きはありますか
 大人のキャラクター商品が人気です。昨年発売した「コンバース×ちいかわ」といったキャラクターとのコラボ商品は大変人気で、これまでいなかったような客層にも買われました。
「ドラえもん」のキャラクターを使ったバッグも人気です。発売に際しては、社内でも疑問視する声が多くありましたが、普通のサラリーマンが通勤で持つドラえもんのリュックが大ヒットしました。
 低価格帯のキャラクターバッグは以前からありますが、本格的な革の財布やハンドバッグ、スーツケースはありません。また、大人が買うバッグのキャラクターもありませんでした。コロナが明けてからは日本人だけでなく、インバウンドにも人気で、このカテゴリーは可能性があると考えており、取引先が持っているブランドや、我々のPBとキャラクターとのコラボを進めています。

――PBでの販売戦略については
 現在、PBはターゲットや価格帯別に、プレミアム、ベター、ボリュームの3つのゾーンに分け、その中でメンズ、レディス、財布などに分けて展開しています。この中のボリューム・ゾーンで、一つの人気カテゴリーに限定して、2ヵ月に1回ほど、「HIGI(秘技)」として打ち出しています。バッグ屋だからできるクオリティーの高いものを、リーズナブルな価格で展開し、新たな人気シリーズとなっています。

――店舗政策、業態開発の動きは
 SCでは多業態で複数出店をしていますが、コロナ禍ではこれを集約することで、人件費や家賃を抑える方向で動いてきました。一方で新規業態を開発し、積極的に出店・改装も行ってきました。
2022年12月には東京駅一番街に「キャラトラステーション」をオープンしました。世界初のキャラクターによるトラベル専門店として、インバウンドの方に大変人気の店となっています。同業態は韓国からの旅行者などが多い、福岡のキャナルシティ博多にも出店、3号店を横浜にオープンの予定です。